スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

妖怪腹切丸伝説

なんか凄くくだらないものを書いてしまった……。

以前の頭蓋骨持ち歩き少女コンペの「いつだってプリズン」は、稚拙なのはともかく気に入っていたけれど、今回はなんと言うか……なんとも言えねえ

3日前、ちょっと時間があるからと考えていたものをなんとなく書き始めたら今日までかかったよ!というわけで僕の苦労と苦悩と徒労の結晶、読んでやってください。感想は思いっきり本音で書いて貰って構わないんで。

次は書きたいシチュエーションを含んだものではなく書きたいシチュエーションを書く。絶対そうする。

改行が少ないのは長さの関係です。

では続きよりどうぞー


サークルの合宿2日目の夜、俺は一人酒を飲みながらTVを観ていた。
「地方のTV番組ってチャレンジ精神旺盛だよなー」
『ご当地ヒーロー妖怪腹切丸が幽霊屋敷を訪問!!』
妖怪がご当地ヒーローって! とか妖怪と幽霊って別物だろ! とか脳内ツッコミをしていると突然ドアがガラガラっと開かれ
「さ~て宴もたけなわ、ここらでオリエンテーションをやるぞー」
宴の途中でこそこそ抜けだしたきり数時間姿を見せなかった会長が、戻ってくるなり周囲に呼びかけた。
「……………………」
しかし誰も反応しない。しょうがないので俺が返事することにした。
「なんで飲み会の終盤にオリエンテーションなんてやるんですか?もうろくに参加出来る奴いないですって。ほら、さっきまであんなに元気だった赤池さんも寝ちゃってますし。」
俺の横で小さな寝息をたてて眠る赤池さん……可愛い
「寝てる奴は最悪たたき起こせばいいだろう……うん?なあ能美よ、他の奴らはどうした?そう言えば見当たらないが」
「……まず最初に高橋が丸井さんを連れ出して、その後もう2組ほど気付いたらいなくなってましたよ。まあ今頃よろしくやってるか、終わって寝てるんじゃないですかね?」
そしてすぐそこで大きないびきをかきながら寝ている男が2人、飲み過ぎて気持ち悪いと言って部屋に戻った下級生女子もきっと戻ってこないだろう。小規模オールラウンドサークル総勢12名のうち、会長のオリエンテーションに付き合える状況にあるのは現状俺ただ一人である。笑えない。今はただただ酒で潰れることのないこの身体が恨めしい。
「ふむ、コテージで逢い引きとな。なんというか、猟奇殺人の匂いがプンプンするなあ。ジェイソンとか」
「満面の笑みで物騒なこと言わないでくださいよ。まあ、オリエンテーションはあれです、タイムオーバーで会長の負けです。もう少し早く戻ってくれば赤池さんあたりが喜んで参加したでしょうに。今まで一体何をしていたんですか?」
「ああ、オリエンテーションの準備に手間取ってな。いやあ、爆弾を自作というのはなかなかに難しい。」
「はあ、爆弾ですか……暑さで頭やられたんですか?というか、そもそも材料とかどうしたんです?」
「材料ならマスターが用意してくれたぞ。ふふふ、いいよなあのマスターは。言ったら何でも持っている。私はキムタクドラマではHEROが好きでなあ、今回の合宿の宿泊先をここに決めたのもあのマスターの噂を聞いたからなのだよ実は。」
そうなのだ。言えば世界各国のお酒が出てくるわ、広島焼きや牡丹鍋、ゴーヤチャンプルまで作ってくれる。おかげでここ2日、軽井沢にいるにもかかわらずみんなの悪ノリもあって軽井沢らしい食べ物を全く食べていない。あれ?軽井沢らしい食べ物ってなんだ?
「まったく、いくらマスターが嫌な顔一つせずに何でも用意してくれるからってみんな好き勝手やりすぎです。高橋なんてさっきコンドーム貰ってましたよ、薄々の」
他にも色々用立てて貰っていたようだが丸井さんの名誉の為にも伏せておこう……。ああ、あんな物が丸井さんの中に……。
「ふむ、そうは言うが爆弾の材料ノリノリで用意してくれたぞ?というか気付いたら一緒に作っていた。実質半分以上彼の功績だ。」
「……それで、結局完成したんですかその爆弾とやらは」
「それなんだが……うむ、起爆スイッチに多少の不具合が発生してな、マスターが作り直すと言っていたが。なのでオリエンテーションは爆弾はなしの方向で……」

「あれ~わたし寝ちゃってたの~?」
女神、もとい赤池さんのご帰還である。瞬時に会長のどうでもいい話を頭の中から追い出す。
「30分前くらいかな?急に静かになったと思ったら寝ちゃってたよ。大丈夫?」
「大丈夫……でもないで~す。なんか頭痛いかも」
「じゃあ部屋に戻って横になった方がいいよ?一人で大丈夫?送っていくよ?」
「一人で大丈夫でーす。それに」
せっかく会長と二人きりのところ邪魔するわけにはいきませんし、と俺の耳元で囁いて彼女は部屋に戻っていった。
「ははは、どうやらフラれてしまったようだな能美よ。どうだ、私が励ましてやるぞ?」
せっかく二人きりなのだからな、と憎たらしい笑顔を――会長にとってこれ以上ない笑顔を俺の顔に近づけながら言ってくる。
「いいえ、俺ももう部屋に戻ります。正直赤池さんを他の奴らの魔の手から守った時点で目標達成でしたし、寝顔を堪能することが出来なくなった以上、明日に備えるのが十全かと。」
「どうやら知らないうちに至福の時間を邪魔していたようだな。はは、悪いことをした。明日も早いし、私も寝るとしよう。」
そう言って会長は部屋に戻っていった。傍から見てキスをしていると誤解されそうな状態から解放されて、俺は胸を撫で下ろていた。
さあ寝よう、明日も早い。時刻は深夜2時、妖怪腹切丸が地縛霊に斬りかかろうとしたところでTVを消し、部屋に戻った。
惨劇がすぐ背後までやってきていたことに、これっぽっちも気付かぬまま、俺は眠りについた――



「ぎゃあああああああああああああああああああ」

普通に生きていればまず発声することのないであろう大きな悲鳴を聞き俺は目を覚ました。時計を見る、朝の4時、いくらなんでも巫山戯てこんな大声を出すとは思えない時間だ。俺はベッドから飛び起きて廊下に出た。同時にガチャ、とすぐ隣の部屋のドアが開き、会長が飛び出してきた。
「な、なにごとだ!?」
どこか嬉しそうなのは気のせいだろうか、気のせいだと思いたい。
「分かりません! とりあえず只事ではなさそうですね。いくらなんでもお巫山戯にしては度が過ぎる。」
マスターの部屋は隣の建物だが、そういう問題ではない。大学生のモラルが疑われないよう、大学生も必死なのだ。
「それにしても……静かだな。我々の話し声以外物音一つしない。」
「そうですね。と、とりあえずこの階から一部屋ずつ見回って行きましょう」
言い知れぬ不安を感じながら、まずは突き当たりの部屋へ向かう。
「……えっと、ここ高橋の部屋ですけど……どうします?」
音がしないので最中ということはないが、おそらくは丸井さんも一緒に寝ているはずだ。
「関係ない。鍵は、開いてるな。よし入るぞ」
バン!と堂々とドアを開けて部屋に入る会長。続けて俺が入ろうとすると
「うっ……」
会長の身体が一瞬蹌踉ける。慌てて身体を支え、そのまま会長の頭の横から部屋の中を覗いた。

……………………そこには、2つの肉塊、いや2人、高橋と丸井さんが裸のまま、腹を裂かれて転がっていた。
「え?あ、ええ?た、高橋……?まま丸井さん……?」
なぜ2人の名前を声に出してしまったのか、一気に、非現実な光景が、俺の頭の中で、現実のものとなる――
「うわあああああああああああああああああああああああああ」
俺は、慌てて、取り乱して、我を失い、無我夢中で部屋から逃げようとする。すると会長が床に落ちていた棒で俺の頬を思いっきり叩いた。何をする!と言う前に、会長が俺の頭をそっと抱き寄せて
「大丈夫だ、まずは落ち着け。取り乱すのが1番危ない。だから落ち着け。私だって動揺している。だから、一緒に落ち着こう」
そう言って俺の頭を抱く力を強める。ああ、凄く安心する。

あ、今会長の胸に頭が挟まれてる……と思う程に頭が落ち着いたところで会長が身体を離した。そしてそのまま部屋の中を見回り始めた。流石にそこまで出来ない俺は会長に
「と、とりあえず、警察に電話しましょう!」
とおそらくはこの場で1番適した発言をしたのだが会長は
「いや、それより他の部屋を見回るほうが先だ」
と言い出した。
「な、なんでですか! 今すぐ警察に電話して、後は部屋に鍵かけて閉じこもってましょうよ! これ絶対殺人事件じゃないですか!ま さか犯人捜しするんじゃないでしょうね!? 」
「だから落ち着けと言っている。」
そう言ってまた棒状の物で叩かれた。
「いいか。私達は数分前に悲鳴を聞いて起きた。しかしこの血の乾き具合を見る限り、この2人が殺されたのはそれよりずっと前である可能性が高い」
専門家ではないがな、と言いつつ部屋の窓を指差す。
「見ろ、あの窓は外から割られている。犯人は外から侵入し、この2人を殺害し、そしてそのまま」
「コテージ内に入った?そうか、だから鍵がかかっていなかったんだ!」
「ふふふ、もしかしたら犯人は本当にジェイソンかもしれんな。まあいい、ともかく我々が悲鳴を聞いている以上、現在進行形で誰かが襲われている可能性が高い。いいか、警察には連絡する。だがその前に現状を把握する方が先だ!」
そう言って会長は部屋を出ようとする。
「まずは私の部屋に行こう。武器代わりになる物がいくらかある。そしてその後は慎重に一部屋ずつ見て回る。いいか?」
「あの会長、それは分かりましたが、その気になることが、というか、気にしたくないことというか……」
そう、この惨劇ほどではないにせよ、衝撃的な事実が目の前にある。
「……無視しろ。よし行くぞ! 」

そうして僕らは部屋を出た。高橋のお尻に刺さったバイブは見なかったことにして……
(まさか使われる方とはな……というか、会長が俺を叩いた棒状の物って……いいや忘れよう!! )


5分後、俺達は2階の最後の部屋から廊下に出た。会長の表情は厳しい、おそらくは俺もそうだろう。
「まさか6人も殺されているとは、な。」
そう、俺達はさらにもう2組の死体を発見していた。いずれも飲み会の途中で抜けだしたカップル達である。高橋達と同じように腹を裂かれて死んでいた。いや、まあ同じようとは言っても……
「まさか同じサークルの半数が変態……いや一晩で殺されるとは驚きですね」
なんというか、色々麻痺してきている。自分の命も危機に晒されている可能性の高いシリアスな場面のはずなのに、死体が亀甲縛りされていたり(腹の部分だけ裂けていたが)ナース服を着ていたりでどうにも冗談のようにしか思えない。ちなみにどちらも男の方が、である。
「うちのサークルはまあ、変な奴にしか声かけないからな。性癖的な意味でのオールラウンドなのだ」
「そんな事実知りたくなかったですよ……というか俺も勧誘されたんですけど!?」
「能美も十分変だろ。さて、真面目な話、どの死体も殺されてすぐという感じではなかったな。」
「俺はそこらへんはよく分からないんですけど、どこらへんで判断したんですか?」
「まず第一に男側が射精した痕跡がなかった。そして第二に男女共に性器が乾いていた。」
「うぐ……よく見てますねそんなところ」
死体じゃなくたってそんなところ見たくない。
「で、だ。非常に言い辛いのだが、先程の悲鳴がこの階の被害者6人の誰のものでもない以上……」
そう、さっきからずっと考えないようにしていたことだ。
「1階の誰か、ということになりますよね……。」
「では1階に行くぞ! いいか、絶対に気を抜くなよ!」
ギュッと、折れるんじゃないかというほどに強く、手にしたバールのような物を握り締める。人でなしと言われてもいい、他の誰が殺されていても構わないから赤池さん、無事でいてくれ!


1階に降りる。まずは階段を降りてすぐのリビングに向かう。ドアに手をかける。緊張のあまり吐きそうだ。
「よし、開けろ」
会長に言われると同時に、俺は思いっきりドアを開けた。

……………………ありえない光景がそこには広がっていた。まず目に入るのは廊下から漏れる明かりと月の光に照らされた……赤色。そしてその赤色……血に染められた2人の男、俺達が部屋に戻る際放置しておいた2人、の、裸の男達。

「「は?」」
俺と会長の唖然とした反応が重なる。当然だ。目の前に、裸のまま寄り添って、そして身体の一部を接続させている男達がいる。よく見れば両者とも腹を裂かれているが、そんなことは気にならない。

「えええええええええええええええええええええ」
俺がつい状況を忘れて大声を出してしまった次の瞬間、会長が手にしていたバールのような物を思いっきり振り上げた。
「えええええええ……え?」
キィンと甲高い音が部屋中に響き渡る。音の発生源は先輩の振り上げたバールのような物と……見知らぬ大男が振り下ろした日本刀だった。
「え……?」
武器の相性ゆえか一旦距離を取る大男。よく見ると、大男は人間ではなかった。そう、頭から巨大な角を2本生やした……
「お、鬼……?」
「鬼ではない!!」
鬼という単語に強く反応したらしい。人間の言葉は分かるらしい。
「我が名は妖怪・腹切丸! 鬼などと一緒にするでない!」
妖怪!? この現代日本で!? いやその前に
「妖怪腹切丸というと、確かここらのご当地キャラクター……」
「妖怪・腹切丸だ!! 妖怪で一旦切れ!! ええい腹立たしいあのようなインチキご当地キャラクターと勘違いされるなどと! 我は古くよりこの地で語られてきた妖怪なのだぞ!?」
「ほう。それでその妖怪腹切丸……失礼、妖怪・腹切丸とやら、貴様がうちのサークルのメンバーを殺した犯人で間違いないのか?」
くそこの人順応性高いよ!
「ああそうだ、我がやった。見事に腹が斬られていただろう?」
「ああ。しかし何故このようなことを?」
「コテージで愛しあっていたからに決まってるだろうが!!」
「ああ、それなら仕方がないな」
「納得するのかよおおお!?」
あんたは自分のサークルのメンバーがそんな理由で殺されて納得出来るのか
「コテージで愛しあえば殺される恐れがあるのは常識だろう?いわゆる死亡フラグというやつだ。それに」
俺に向けていた視線を妖怪・腹切丸に合わせ、続けた
「そもそも人を殺していい理由など存在しない。正当防衛だってそうだ、あれは許される理由であって殺していい理由にはならない。しかし、そんなことは今どうでもいい。大事なのは我々が、この場を生きて逃れることが出来るかどうか、だ。」
「ふん、我はただ、コテージで愛しあう者どもの腹を斬って殺すのみ。それが存在理由だからな。そして」
ヒュッと、日本刀を振り上げ
「見られてしまったからには貴様らを生かしておくわけにもいかぬ。」
会長に向かって振り下ろそうとした瞬間、部屋の明かりが付いた。そしていきなりの光に目が慣れる前にその男は現れた。

まず目に付くのは日本刀、そして頭に結われたチョンマゲ。葬式で住職が着ていそうな服装とそれらが致命的に似合っていない。正直言って胡散臭い。しかし、凛々しい表情がそんな感想を喉から先へと進ませない。
「間一髪、ギリギリセーフといったところかな?」
そう言ってその男は日本刀を構え、するりと会長と妖怪・腹切丸の間に立った。助かった……のか?いや、ちょっと待て! 俺はこの男を知っている!
「あんたは……妖怪腹切丸!!」
「やあやあ初めまして。危ないところだったね。さあ下がりなさい。」
そう言って俺と会長に後ろに下がるようにとジェスチャーをする。妖怪腹切丸――寝る前にTVで見た、霊と戦っていたこの地方のご当地キャラクター。通常ご当地キャラクターはマスコットであることが多いがこいつは違う。グッズこそデフォルメ化されているものの実際には本人がキャラクターとして活動している稀有な例である。どちらかと言えば名物男というべきか。しかし、なぜその妖怪腹切丸が?
「僕はねえ、普段はTV出たりとおちゃらけているけれど、本職は妖怪専門のなんでも屋さんでねえ。今は副業が忙しいから、こうやって気配を感じた時にだけ首を突っ込んでいるんだよ。」
偶然近くでロケをしていてね、と俺に向かってウインクをした。気持ち悪い。
「それにしても君達も無用心だよ。コテージで愛しあうのはいけないとご両親から教えられなかったのかい?」
「ふん、世界から戦争がなくならないように、コテージで愛しあうもの達がいなくならないのが世の常だ。」
そんな馬鹿なことを言いながら妖怪・腹切丸の方も再び刀を構えた。
「貴様のせいで我は他の妖怪から馬鹿にされていたのだ。いつか殺してやるとは思っていたが、ふん、いい機会だ。そこのガキ2人共々、皆殺しにしてやる」
「っ……!!」
そのあまりのプレッシャーに耐えきれず、次の瞬間俺は廊下へ通じるドアへ向かって走りだしていた。俺は生き残りたい、ただそれだけしか考えてなかった。だから、だから悲劇は加速する。
俺が走りだすと同時に、全員が動き出した。まず妖怪腹切丸が俺の無防備さの危険性に気付いた。俺が殺される――だから彼は構えを解いて、俺を捕まえた。
次に妖怪・腹切丸が動いた。妖怪腹切丸が俺を捕まえようと動いた為一瞬無防備となった会長を捕まえようと走りだした。
最後に会長が、自分の危うさに気付き、俺達の方に向かって走ろうとした。しかし足元にあった、何か液体の入ったチューブのような物に脚を捕られ、出遅れた。そして
「動くな!!」
妖怪・腹切丸が勝利を確信した笑みを浮かべ、俺達、いや妖怪腹切丸を見た。左腕を会長の首に回し、右手で持った刀を会長のお腹に押し付けている。
「会長!!」
「能美!! ぐっ……」
妖怪・腹切丸が刀をさらに押し付ける。腹が切れ、血が一筋すぅっと流れた。
「ふん、悪いが使えるものは何でも使わせてもらおう。さてどうする妖怪腹切丸?お前が命を差し出せばこの娘は解放してやっても構わないぞ?」
卑怯な! どうせその後に殺すに決まっているじゃないか
「……僕はねえ、今じゃ妖怪腹切丸と呼ばれているけどねえ、元々は違う名前だったんだよねえ」
そう言って、妖怪腹切丸は歩き出す。一歩一歩ゆっくりと2人に向かって。
「おいあんた! 何考えてんだよ! 止まれ! 止まれよ!」
しかし妖怪腹切丸は止まらない。尚もしゃべり続ける。
「元々妖怪腹切丸とはこの刀の名前だったんだよねえ。僕は大したことないけれどこの刀が有能で有名になったんだよ。そして気付いたら僕自身が刀と同じように呼ばれていた……さて」
妖怪腹切丸が歩みを止めた。そこは、両者共に刀の届く間合い。
「何か言い残すことはあるかな妖怪・腹切丸。断言するよ。君がどんな風に動こうと、君は確実に僕の剣から逃がれられない。」
「ふん、見誤ったか。人質を無視とは、な。まあいい、人質として機能しなくても盾として使うまでだ。」
そう言って妖怪・腹切丸も構える。刀を振り上げ、会長を前に突き出す。くそ!
「おいあんたやめてくれ! くそ、そこの妖怪! 俺が代わりに人質になるから会長を解放してくれ」
「能美……」
「安心していいよ。この刀は妖怪腹切丸」
妖怪腹切丸と妖怪・腹切丸が同時に動き出す! 駄目だ会長が……!
「この刀が斬るのは妖怪のみ! それ以外は全てを通過する!」
シュッ――

次の瞬間二人の腹が斬られた
一人は妖怪腹切丸。妖怪・腹切丸の刀が完膚なきまでに彼の腹を斬り伏せた。
もう一人は会長。妖怪しか斬らないはずの刀が、彼女の腹を斬っていた。

「「「え……」」」
俺も、斬られなかった妖怪・腹切丸も、会長を斬ってしまった妖怪腹切丸も、心底信じられないという反応をした。
唯一会長だけが
「ふぅ……」
と、まるで何かに観念したかのように息を付いた。
「ま、まさか君も、妖怪だった、のか……」
思いがけず会長を斬ってしまった際の隙で斬られた妖怪腹切丸が息も絶え絶えに言う。
「会長が……妖怪?」
何を馬鹿なことを!?
「ふん、よく分からぬが、最高の展開だな!ふはは」
勝利を信じて疑わない妖怪・腹切丸。それもそうだろう。もうあいつを倒す手段は……
シュッ――

次の瞬間、蹲っていた会長が起き上がり、手にしていたバールのようなもので妖怪・腹切丸の腹を――斬った。
「な……」
勝利をほぼ手中に収めていた妖怪・腹切丸が崩れ落ちる。目まぐるしく変わる状況を飲み込めず、俺は一歩も動けない。妖怪腹切丸も、妖怪・腹切丸も動かない。
おそらくは、今この状況を1番把握しているであろう会長が、口を開いた。
「能美、済まない。サークルの皆にも悪いことをした。妖怪腹切丸の言ったとおり、私は妖怪だ。そう」
会長は今にも倒れそうな身体をバールのようなもので支え、強く、強く宣言した。
「私は妖怪・妖怪腹切丸だ!!」


……………………。
「あ、あれ?反応がないぞ?もっとこう、ええええええええ!?とかそういった反応はないのか能美よ!」
「はあ……。」
疲れた。俺もう疲れちゃった。
「なんだその反応は! さては信じてないな!?うっ……」
あ~あ、大声出したらお腹の傷が痛むだろうに。
「いやあ、信じてないわけじゃないんですよ。妖怪なんて荒唐無稽な話だとは思うけど、3人とも、いや数え方人でいいのか知らないですけど、3人とも大真面目にやって、そんな大怪我までしてますしね。いやでももう無理です。俺の脳、容量オーバーです。いやどちらかと言えば処理落ちです。だからすみません会長、俺あんたのこと好きですけどここで大人しく3人で倒れててください。あ、すぐに救急車呼ぶから安心してくださいね。妖怪だけどなんとかなりますよね?」
そう言って俺は廊下へ向かう。
「参ったねえ……」
「ふん」
「の、能美……」
「よしまずは赤池さんと合流しよう。そうだ俺には赤池さんだけがいれば」
「赤池というのが誰のことかは知らないが」
後ろからそんな風に声をかけられ俺は立ち止まった。首を振り向くと妖怪・腹切丸が俺の目を見て、にやりと笑いながら言った。
「この建物内で生きている人間はお前と、そこのくたばり損ないだけだ。残りは全て、俺が殺したよ」

今度こそ、限界だった
「うわああああああああああああああああああああああ」
赤池さんが赤池さん赤池さん可愛かった赤池さん赤池さんがあああああああ
「待て、何故彼女が殺された?彼女は一人で部屋に戻ったはずだ」
違うんです会長。もういいんです。やめろやめろやめろ彼女が殺されたってことはつまり
「ふん、一人でいた者を殺したりはしない。」
「ではなぜ!?」
俺は彼女のことが好きだったから薄々感づいていて
「我が殺した女は、男と愛し合っていた3人、そして女同士で愛し合っていた2人、それだけだ」
「え……?」
会長が信じられないと驚いている。俺は、俺は耐えきれず
「ははは!なんなんだよ! なんなんだようちのサークルは! 会長が妖怪で! 11人中6人が飲み会抜けだしてSEXして! 4人が同性愛者で!」
「それはそれは、酷い有様だねえ……」
「五月蝿えよ!! 言われなくたって分かってるよ!!」
「ふん、分かっていたのかはしらんが、そんなメンツでコテージに来るとはな。お前も酷い代表だなあおい。」
「まさかここまでとは思ってなかったが、大方は予想とおりだったよ。」
「は?会長、あんた何言って」
「私は妖怪を斬る妖怪だからな。それを目的として生きている。このメンバーでコテージに泊まれば悪いものを呼び寄せると分かっていて、合宿を決行した。謝って済むことではないだろうが、能美、すまなかったな。」

「…………死のう。」
「能美!?」
「いやもう本当限界ですし、生きてて辛いだけっていうか、このままだと俺大量猟奇殺人犯扱いされる可能性すらありますし、うん、だから死にます」
「何も死ぬことはないんじゃないかなあ。ほら、そこの妖怪・腹切丸にトドメを刺して救急車呼んでくれたら、ごふっ、僕が警察に説明するから。」
「そうだ能美、何も君まで死ぬことはない。赤池のことは、確かに辛いだろうけど」
「うるせえええええええええええええええええ」
俺は叫ぶと同時に内線を手に取った。
「あ、マスターすみませんこんな時間に起こしてしまって。え?起きてた?徹夜で作業、なるほど。ところで急ですまないんですけど、ちょっと日本刀を一つお願いします。」
「能美……?」
ガチャ、と内線を戻す。するとすぐに玄関が開く音がする。流石マスターだ。
「いいか!? 俺は死ぬ、確かにそう言った!だがな、その前にお前ら全員ブッ殺してやる!」
「「「ええええええええ」」」
マスターが部屋に入ってくる。彼は顔色一つ変えずに俺に日本刀を差し出す。
「ありがとうございますマスター。さて」
ヒュン、と鞘から取り出して刀を眺める。
「流石マスター。一目見て業物だと分かる……え?違う?無銘の刀?……ごほん、お前ら死にぞこないにトドメを刺すくらいなまくら刀で十分だ!」
「能美が……壊れた……」
「まあ気持ちは分かるけどねえ」
「ふん、貴様等に殺される我ではないわ」
「五月蝿い!! よしこの刀は腹切丸!どうだ、お前らを殺すのにぴったりの名前だろう!?」
さて、俺の人生のクライマックスだ、どうせなら派手に行こうじゃないか!刀を構えて、謳う!

「妖怪に逢うては妖怪を斬る 人に逢うては人を斬る 腹切りの理ここに在り 覚悟!!」
決まった! と心の中でガッツポーズを決めながらまずは1番近くにいた妖怪・腹切丸に斬りかかる。しかし

「あれ?」
死にかけの妖怪・腹切丸は最初の打合で俺の腹切丸を力任せに弾き飛ばし、返す刀で俺の腹を斬った――
「ふん、例え死にかけていようとも貴様のような素人に傷ひとつ負わされる我ではないわ」
「能美!!」
あ、まだ心配してくれるんですか会長。それにしてもこれは予想外だった。どうしよう?あんな啖呵きったのにもう一歩も動けない。どうする?考えろ考えろ。
「ふふふ、どうですか皆さん、ここは痛み分けということで。申し訳ないそこのマスター殿、救急車を呼んではくれませんか。」
「…………。」
流石はマスター!客以外の注文は受け付けない!さて考えろ考えろ!もうほとんど伏線は回収されてるんだ。残す一つを回収して幕引きといこうじゃないか!

「そうだ!マスター、最後の注文だ!あんたがさっきまで作ってた物をくれ!」
言うと同時に俺の手に小型の機械が収まっていた。そして見るとマスターは既に出口へ向かって走っていた。流石だ、流石過ぎるぜマスター!!
「「??」」
妖怪腹切丸と妖怪・腹切丸は全く事情が呑み込めていない。しかし
「ば、馬鹿な! それは! やめろ能美! 本当に死ぬぞ!? それは」
「だから言ってるでしょう?もう、終わりにするんですよ、全部ね!」
「それは爆弾の起動スイッチじゃないか!」

「「なにいいいいいい」」

「それでは皆さんさようなら」

というわけでここまで長いことありがとうございました。まあ今時恥ずかしいことだとも思いますけど背に腹は代えられないということで。そう、これはいわゆる一つの

BAAAAAAAAAAAAAAANNNNNNNNNNNNNNNNNN!!!!

爆破オチってやつです。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

toma

Author:toma
FC2ブログへようこそ!

最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。